挑戦讃え、輝かしい年へキックオフ
平井 伸治
鳥取県知事
高難度技「5154」でメダル目指す
三上 紗也可さん
米子ダイビングクラブ 水泳飛び込み選手
2020年東京五輪出場が内定した県勢第1号。小学生の時から師事するコーチの下で技を磨く。
共生社会の実現に向かう安堵の伴走
川口 誠さん
ランニングチーム「白うさぎB&G」代表
視覚障がい者と伴走ボランティアとがランニングやウオークを共に楽しむ活動に取り組む。
パラスポーツ発展にノウハウで貢献
山下 忍さん
一般社団法人鳥取県障がい者スポーツ協会 スポーツ指導員
障がい者スポーツの普及・選手育成のほか、パラ陸上の国際大会に日本代表コーチとして帯同。
「本物」のすごさ、皆に感じてほしい
新田 明彦さん
一般財団法人鳥取陸上競技協会 専務理事
中学、高校の陸上競技指導者として、国内外の大会の優勝・入賞者を多数育成している。
〈新春座談会〉 左から山下忍さん、新田明彦さん、平井伸治鳥取県知事、三上紗也可さん、川口誠さん
スポーツの年
知事 あけましておめでとうございます。今年は東京オリンピック・パラリンピックの年で、ジャマイカ選手団やクロアチアの国際セーリングチームが県内でキャンプ。2月にはワールドマスターズゲームズ2021関西のエントリー開始。スポーツイヤーが始まります。特に三上紗也可選手は五輪に挑戦されます。皆さまと力を合わせながら、選手の活躍を応援し、日本が輝く、鳥取が輝く、そんな年になればと期待しています。
2019年、境港で合宿中のクロアチアのセーリングチーム「J.K.モルナル」。ヨゾ・ヤケリッチコーチは「風も波も地元の人も素晴らしい」と絶賛
三上 米子ダイビングクラブに所属し、水泳の飛び板飛び込みに打ち込む毎日です。
川口 視覚障がいのあるかたと伴走ボランティアのランニングチーム「白うさぎB&G」を2018(平成30)年に設立しました。
山下 県障がい者スポーツ協会の指導員です。県内ではただ 一人、障がい者スポーツコーチの資格を持ち、障がい者スポーツの普及・振興に取り組んでいます。
新田 鳥取陸上競技協会の専務理事です。ジャマイカの事前キャンプを成功させ、それを機に子どもたちを元気にさせたいと思います。
尽力実り、開花は間近
司会 三上さんは2019年の世界水泳選手権で3メートルの飛び板飛び込みで第5位に入賞され、東京五輪出場が内定しました。
三上 飛び込み競技の魅力は、1本2秒弱という短時間で勝敗が決まる点と、トップレベルの選手でも失敗することがあるため、最後まで勝敗が分からない点です。小学2年生で飛び込みを始めて以降、周囲のサポートのおかげで競技に専念できました。また、ずっと指導を受けてきた安田千万樹コーチに指導を受けるため、鳥取で頑張ってきました。
知事 昨年の世界水泳選手権で素晴らしいダイブをされ、五輪の切符を手にされたことが県民に本当に大きな力と勇気を与えました。本県でも飛び込みの安田舞選手、セーリングの瀬川和正選手、ボートの冨田千愛選手、ラグビーの小笹知美選手、ボクシングの入江聖奈選手、パラ陸上やり投げの高橋峻也選手などが活躍中。オリ・パラ目指し花開いてくれればと願います。
司会 山下さんは近年の世界パラ陸上選手権大会、アジアパラ競技大会の日本代表のコーチとして国内外でご活躍されています。県内ではどのような活動を。
山下 障がいの有無にかかわらず楽しめるスポーツがあること、指導員・仲間の存在やスポーツの力でみんなの生活が豊かになることを知ってもらいたくて、障がい者スポーツ体験会の企画・運営、選手の発掘・育成に力を入れています。
知事 今年、県では、布勢総合運動公園に障がい者スポーツの拠点を開設し、人材養成を本格化させます。日本代表コーチである山下さんは県にとって大きな財産。障がい者スポーツの世界を切り開いていただきたいと思います。
司会 川口さんは視覚障がい者と伴走ボランティアでつくるランニングチームを結成されました。
川口 チーム名にある「B」は視覚障がい者、「G」はガイド、「&」は視覚障がい者とガイドをつなぐ絆のロープと心の「安堵」を掛けてます。会員は現在61人、視覚・聴覚・知的障がい、車いすのかたの参加も歓迎します。月2回、県内各地で練習会を開催。また、防災の観点から申しますと、障がい者の近くにガイドがいるのが理想なので、平時でも災害時でも役立つガイドの育成にも取り組もうと思います。
知事 障がい者スポーツが、障がい者も健常者も共にスポーツに親しみ、人生を彩り豊かにしていくことが証明されました。みんなで応援して、地域でスポーツの輪を広げていきましょう。
司会 新田さんは、ジャマイカ陸上チームの事前キャンプ誘致にご尽力なさいました。
新田 2007年の大阪の世界陸上競技選手権大会を機に、県内の子どもたちや指導者に本物のアスリートを見せ、感動させたいというのが一番の思いでした。今でこそジャマイカは陸上の世界トップと言われますが、それは2007年の鳥取キャンプがきっかけだと自負しています。
2018年、布勢陸上競技場でのジャマイカ陸上セミナーに県内から多数参加。ジャマイカ陸連のトップコーチから指導を受けた
知事 大阪大会キャンプ当時、ウサイン・ボルト選手は無名でしたが、ジャマイカのコーチに「彼は世界のトップアスリートになる」と言われました。世界トップのボルトの原点は鳥取です。今年のキャンプも地元交流をします。ご期待ください。
活躍願い、盛り上げる
司会 では、今後の展望や今年の抱負をお伺いします。まず、三上さん、東京オリンピックへの意気込みをお聞かせください。
三上 メダル獲得を目指します。飛び込み競技で日本人はまだメダルを取っていません。自分が1番にメダルを取って先駆者になりたいです。そのために、世界で数人しか飛んでいない技「5154」、前宙返り2回半回る間に2回転ひねる技を特訓中です。うまい男子選手の動きを見てイメージトレーニングし、ウエートトレーニングや体幹トレーニングでジャンプ力やひねりの速さにつなげられるようにしています。
「いきいき茨城ゆめ国体2019」で自己最高得点を記録した三上さん(写真提供は(株)新日本海新聞社)
新田 3メートルの中で、すごいな。
三上 現在トップの中国人選手に比べると、水しぶきがどうしても多く跳ねてしまうので、入水技術も練習しています。
知事 三上選手が高校生の頃から演技を拝見していますが、本当に最近は力がついたなと。パワーはもう世界の中でもトップクラスです。ところで、ケーキのイチゴはお好きですか。
三上 はい、好きです。
知事 「Go!イチゴよ(5154)」。好きな鳥取県のイチゴを食べれば「5154」が決まりますね。
一同 (笑い)
司会 新田さん、陸上競技でも三上選手に続くような選手が育ってほしいですね。
新田 県出身の成年選手にオリンピック出場の可能性がある選手もおり、県から出場選手をというのが一つの目標、夢です。また、ジャマイカのキャンプを大成功させ、東京オリ・パラで素晴らしい成績を、とりわけ400メートルリレー決勝では日本とジャマイカが金メダルを争うレースをしてほしいです。さらに、二巡目国体も見据えて5年後、10年後、鳥取県のスポーツをもっと盛んにできたらと思います。
知事 鳥取県ではジュニア選手育成を進めており、有望な選手がいろいろな種目で出てきています。小さな鳥取県から名選手が次々生まれてくれればと思います。
司会 大いに盛り上げたいですね。
スポーツ発の共生社会
司会 山下さん、東京パラリンピックへの思いや障がい者スポーツの新たな展開などについていかがでしょうか。
山下 私は日本パラ陸上競技連盟の強化委員として東京パラリンピック陸上競技出場の車いす選手の指導を担当しているので、昨年のドバイ世界パラ陸上の金メダリスト・佐藤友祈選手をはじめ出場選手がメダル獲得できるようしっかりサポートしたいです。また、私には国内外トップ選手や指導者と共に培った競技指導のノウハウや障がい者スポーツ競技団体コーチとのつながりがあります。そうした強みを県内の選手や指導者に還元し、障がい者スポーツの発展に貢献したいです。
「ドバイ2019世界パラ陸上競技選手権大会」に帯同した山下さん(中央)。レース前に車いすを調整(写真提供は山下さん)
知事 山下さんの指導によってメダルをたくさん取れるように、みんなで応援していきます。
司会 川口さんは、現在の活動を共生社会づくりにと考えておられます。
川口 視覚障がいや知的障がいのあるかたには、ガイドがいないとウオーキングやランニングが難しい場合があります。そのことが、住み慣れた地域でのスポーツ活動を難しくしているように思います。共生社会実現のために、伴歩・伴走者を育成したいです。6月に中部で行う講習会には多くの人に参加してほしいですね。障がい者がより暮らしやすい社会をつくる「あいサポート運動」を県と共に広げたいと思います。それから、今年完成する障がい者スポーツの拠点が、真の障がい者スポーツの聖地になるよう期待しています。
知事 鳥取県では他県と異なり、健常者スポーツの指導団体も障がい者スポーツ団体と協力して、レベルアップを進めています。またスポーツだけなく、オリ・パラに向けて2月8日、カルチュラル・オリンピアード(オリンピック・パラリンピックの開催国で、前大会終了後から次の大会開催までの4年間に行われる文化プログラム)の障がい者芸術の祭典のキックオフを行うこととなり、私も参加し、9月には中四国の障がい者芸術の祭典を鳥取で行います。
新田 スポーツや芸術、音楽などは世界共通の部分があり、そのすごさは誰もが感じられると思います。
知事 いよいよ5月22、23日にはオリンピック聖火リレーが鳥取県に入ります。聖火は、水木しげるロードで妖怪たちに見守られて走り始め、西部を回った後、倉吉市でセレモニー。翌日、中部と東部を回り、鳥取市で次に引き継ぎます。
8月13日から17日のパラリンピック聖火フェスティバルでは、「大山の火」と「砂丘の火」を西部と東部で起こし、県内各地を巡り、最後に中部地震復興の願いをかけて倉吉市で炎をまとめます。県民の皆さんもぜひ楽しんで参加していただければと思います。
ウサイン・ボルト選手の言葉で「I don’t think about limits.(私は限界について考えない)」。これが限界に挑戦するアスリートの精神です。
三上さん、ぜひ東京で思う存分、日本最初のメダルへのチャレンジを。板の上で跳躍され「いた(板)っていい年」にしてください。
県民の皆さまにとって輝かしい1年となりますことを、心からお祈り申し上げます。
司会 県庁スポーツ振興監 小西慎太郎
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