「海」は、歴史的仮名遣いを使っているところがとってもおしゃれで、それによって物語性が醸し出される、美意識の高い感じですよね。
「FIVE」は、高校1年生らしく、気持ちがストレートに伝わってくる、ビンビンする歌が多くて、好対照な対決だと思いました。
「FIVE」の先鋒の歌は、「青」というと、青空とか、大きなものを歌おうと思うんだけど、しおりという小さいものに映った青空を捉えているところが、目の付け所がいいなと思いました。まっさらなしおりの質感、表面のツルツル感に、読書感想文という嫌な宿題、どれもこれも夏の終わりのあのけだるい雰囲気を塗りこめているところがうまいですね。中堅の歌は、「まだまだ遠い」っていうことは、もっと近づきたいという気持ちがあるということだよね。「まだまだ遠いまだまだ歩く」というリフレインに、このもどかしい距離を詰めて「君」と親しくなりたい、という気持ちがこもっていると思いました。大将の歌は、「私の声叫んで誰にも届かない」という言葉が胸にじんときました。青春って、とっても孤独な瞬間があると思うんだけど、この孤独っていうものを真正面から歌っているところ、ちょっと涙ぐみましたね。
「海」の先鋒の歌は、「絨毯のやうな青さ」というのがとても上手。絨毯の、同じ色だけども、へこんでいるところは色がちょっとくすんだように見えたりする、あの繊細な、けば立つような青の感触。それを、海のちりめん状の波が立っている、あの色合いに例えていて魅力的でした。下の句の「拳で散らす」には、ちょっと暴力性が入っていて、若い人の鬱屈した気持ちがストレートに出ている。上の句の静けさと下の句の荒々しさの対比がとっても素敵な歌だと思いました。中堅の歌は、「ずれる歩幅に気付かぬ君を」がおもしろい。多分、相手の男の子は気付かないんだと思う。そこにいら立っている感じがとても繊細に捉えられていると思ったし、追い越すという動作によって、大胆さが立ち上がってきていますね。大将の歌は、「アドナインス」の和音って、メジャーセブンよりちょっと柔らかい、微妙なほわんとしたあったかい感じの和音になるんですが、あの感じがすごく上手く使われています。歌っている人は、音程が少し上ずっているんでしょう、そういう人に、柔らかい、温かく包み込むような「アドナインス」というコードを付けるところに、作者の優しさみたいなものが出ていて、かっこいいなと思いました。