なかなか、好対決で、甲乙つけがたかったと思います。あえて言うと、感覚的な「高田PLANTS2」に対して、抒情的な「金木犀」、という感じがしました。
先鋒の「手」については、どちらも右の手なんですね。「金木犀」の歌は、「落としたとたん」の「とたん」がすごく効果的で、その瞬間に私の今年の夏が終わってしまったという、自分の中の失落感のようなものが、このひらがな、それから言葉の響きに、とてもよく出ていると思いました。
それから、「高田PLANTS2」の歌は余韻が染みこむというところにすごく感情が入っていて、いい表現だと思いました。右の手首でふれるというのがよく分からなかったんだけど、ミサンガが左手にあって、右の手首で触れるという意味ですか。
【(高田PLANTS2)作中主体は右利きで、私たちで話し合った結果、だいたい手を振るときって、利き手で振るんじゃないかという話になったので、ばいばいと手を振って、揺れているというのと、触っているという、二つの漢字をかけて、こういう表現にしました。】
ミサンガが手首に触れているという意味で使ったということですね。分かりました。
「金木犀」の中堅の歌は、「このまま私を連れていってよ」という表現の、噴水の勢いを見て、自分がその勢いで空に上がっていけたらいいな、連れていってもらったらいいな、というところがすごくストレートで心に響きました。
「高田PLANTS2」の中堅の歌は、錆びた高音というのが、とてもいいと思います。「レ」という音階名が書いてあったので、楽器かなと思って読んでいましたが、合唱の声なんですね。
「金木犀」の大将の歌は、「夕焼けを一緒に入れて」と歌うことによって、その手紙を書いている時の時間や、夕焼けが満ち溢れている部屋の光、或いは夕焼けのにおい、夕焼けの雰囲気など、今書いている時間そのもの、空間そのものを、一緒にパッケージして、相手に送りたいという感じがすごく出ると思いました。この「夕焼けを一緒に入れて送る」という表現がとてもすばらしいと思って、感心した歌でした。
「高田PLANTS2」のオタマジャクシの歌は、「でつぷり」という表現も、なかなか強引な表現で面白いと思いました。オタマジャクシって、手も足もまだ未熟で、でっぷりしているし、何となく醜いですよね。それを見て、自分がまだ未熟な状態であって、早送りして早く大人になりたいんだけど、オタマジャクシもすぐには蛙にはなれないように、自分自身もすぐには大人になれないという、もどかしい気持ちが背景に裏打ちされていると思います。単にオタマジャクシを歌った歌ではなく、作者の、大人になりたい、でもそれができないもどかしさみたいなものがよく出ていて、すごくいい歌だと思いました。
なかなか高度で、とても楽しんで読ませていただいた対決だったと思います。