塩漬けにした魚とご飯を漬け込んで自然発酵させる「なれずし」は、各地でさまざまな種類のものが作られている。
鳥取県智頭町では伝統的に「サバの糀(こうじ)漬け」が盛んで、独特のきりっとした味わいが好評だ。
山間部にある同町では、昔は新鮮な魚や刺し身を食べる機会がなく、塩漬けの魚しか手に入らなかった。
12月に入ると各家で塩サバを糀漬けにし、必要な分だけその都度、桶(おけ)から取り出して正月料理や刺し身の代わり、酒のさかななどとして楽しんでいた。
魚介類が自由に入手できる今でも、古くから伝わる郷土の味として、サバの糀漬けを楽しむ人は多い。
赤唐辛子やショウガを交ぜるのは、魚のにおいを消して魚のうまみを引き出すためという。
同町の生活改善実行グループ「睦(むつみ)グループ」の代表・国政勝子さん(71)=同町西宇塚=は「冬場のタンパク質を確保しようと昔の人が考えた生活の知恵。
漬けて20日から30日ほどたったものが最も美味で、それをラップなどで包んで冷凍保存すれば一年中楽しめる」と話す。
ユズとの相性が良く、ユズの砂糖漬けなどを添えて食べると一層味が引き立つという。
国政さんの作ったサバの糀漬けは鳥取市河原町の「道の駅清流茶屋かわはら」で販売されており、売れ行きも好調だ。