たっぷりと脂が乗った、白くて柔らかい身。
職人が一本一本竹串を刺し、丹精込めて焼き上げた「焼きサバ」は、県東部で古くから庶民の味として親しまれてきた。
焼きサバが最も多く消費されるのは、5月から6月にかけて。
県東部の農家では、焼きサバを旬の葉タマネギと一緒に煮込む。
農繁期の忙しい時期に、簡単に作り置きできる料理として知られている。
日本海で大量のサバが水揚げされていたころ、県東部では多くの業者が焼きサバを作っていた。
冷凍技術は確立しておらず、焼いて出荷することで腐りやすいサバを長持ちさせるのが当時の人々の知恵だったといえる。
焼きサバは、ショウガしょうゆをつけ、そのまま食べてもおいしい。
時間がたっても香ばしさが持続されることと、そのまま食べられる手軽さが人気の理由だろう。
鳥取市南安長の徳田商店(徳田三明社長)では、現在も多い日で4千本を出荷する。
県東部だけでなく、東京や京阪神、広島、四国のスーパーにも卸しており、“鳥取発”の食材は全国に発信されている。
同社の徳田和子常務(57)は「若い人の魚離れが進んでいるが、焼きサバなら魚料理が苦手な人でも簡単に食べることができる。
青魚で健康にも良いので、たくさん食べてほしい」と話している。