新鮮、冬の特別料理「アカガレイの子まぶり」
新鮮なアカガレイの刺し身に加熱した卵をまぶす「子まぶり」は、シンプルで味わい深い漁村の郷土料理だ。濃厚でこくのある卵が淡泊な白身を引き立たせ、ご飯のおかずや酒のつまみとして人気が高い。
鳥取県岩美町網代周辺では、祭りの日や正月に食べられることが多い「ハレの日の料理」。刺し身で食べられる新鮮さと、抱卵している冬場の条件が重なって作ることができる特別な料理という。
山陰松島遊覧(同町大谷)内の料理店「あじろや」では、刺し身の盛り合わせで「子まぶり」も提供。子どもや県外客にも「臭みがなくて食べやすい」と人気があるという。責任者の川口江美子さんは「卵をゆでるときに房に切れ目を入れて、目の細かいざるでこすとほぐしやすい。こげる直前まで炒(い)ると刺し身にまぶしやすく、さらっと仕上がります」と解説する。
同町の網代漁港で水揚げされるアカガレイはこの冬から、「あじろがれい」のブランド名で売り出すことになった。「あじろがれい」は、11~2月に網代所属船が水揚げ▽全長30センチ以上▽市場に陸揚げ前24時間以内に漁獲▽抱卵状態の良いもの-などの条件を満たし、船上で専用のタグが取り付けられる。
「カレイといえば煮つけだが、『刺し身で食べられる』という新たなイメージで売り出したい」と話すのは、県漁協網代港支所の博田幸史さん。松葉ガニやモサエビに続く網代の“新戦力”と位置づけ、県内をはじめアカガレイになじみのある北陸方面などにも販売する意気込みだ。
博田さんは「アカガレイを子まぶりで食べる習慣は、昔は網代や田後などの沿岸部にしかなかったのでは。ほかの地域にも浸透していくことで、あじろがれいの魅力を知ってもらいたい」と期待している。