サザエの水揚げ量が鳥取県内1位を誇る大山町御来屋漁港。
地元漁師の妻たちで結成した「さざえコッペの会」の田中輝子代表(77)が、刻んだサザエやゴボウ、ニンジンなどを釜に放り込んだ。
火加減を調節して、待つこと約40分。
「はい、できた。やみつきになりますよ」。
釜を開けると、立ち上る磯の香りが部屋いっぱいに広がった。
サザエ独特の苦味はなく、コリコリとした食感も残る。
砂糖や酒に加え、薄口と濃い口のしょうゆを配合した味付けが、お米ともよく合い、箸が進む。
田中さんから調理法を学ぶ広沢雪子さん(46)は「すっかりはまってます。
意外と簡単に作れ、おかずもいらない。
冷めた場合でも、かえってサザエの味が際立っておいしい」とほほ笑む。
御来屋に古くから伝わる炊き込みご飯だ。
「サザエは町の宝です」と田中代表。
県水産課によると、県内の2010年のサザエ水揚げ量は170・2トンで、このうち御来屋漁港が約3割の46・7トンを占めた。
同会によると、握り拳ほどの大きさのサザエが最もおいしく、取り出した身を3~4ミリに切り、具材もできるだけ細かくきざむ。
刺し身より食べやすく、子どもでも好んで食べるという。
地域で受け継がれる食。
田中代表は「漁師さんたちが生み出した味を守っていきたい」と話す。