砂丘にうっすらと降り積もった雪を連想させる「生姜せんべい」。
手間暇かけて作られる波形のせんべいは、県東部に伝わる庶民の味として長く親しまれてきた。
生姜せんべいの起源は江戸時代後期とされるが、裏付ける文献はなく、定かでない。
明治後期には鳥取市内のあちこちで生産され、駄菓子として1枚単位で売られていたことが分かっている。
鳥取で民芸運動を繰り広げた吉田璋也は、この生姜せんべいに着目。
焼く、曲げる、塗るという全工程を職人の手で行うことで、民芸煎餅という概念を定着させた。
今でも生産を続けているのは、いずみ屋製菓(鳥取市行徳)、城北たまだ屋(同市松並町)、宝月堂(同市二階町)など数店。
どこも昔ながらの製法にこだわり、1枚1枚手作業で仕上げる。
大まかな生産工程はこうだ。
1 生地を焼き型に流し込み、せんべいを焼く。
2 せんべいを取り出し、固まるまでの数秒のうちに波形に仕上げる。
3 はけを使い、生姜蜜(生姜をすりつぶした汁に砂糖を入れ煮詰めたもの)をせんべいに塗る。
4 乾燥させる。
店によって砂糖の配分、蜜の塗り方、曲げる方法や角度などに若干の違いがある。
それぞれの個性を知った上で、食べ比べするのも面白い。
同市気高町特産の瑞穂生姜を使って製造している宝月堂の佐々木稔郎さん(36)は「生産には手間がかかるが、だからこそ今まで多くの人に愛されてきたのでは。
受け継がれてきた製法を守り、味を残していきたい」と伝統の継承を誓う。