10月19日に、県立琴の浦高等特別支援学校を会場に、「初任者研修(特別支援学校)(研修番号7)」を実施し、キャリア教育について学び、考える一日としました。
校長講話の中では、「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現する」というキャリア発達の姿を、日々の生活の中で、自分自身の言動で子どもたちに示していく姿勢を示唆していただきました。教諭の講義では「キャリア発達を促す指導・支援」として「できる・わかる」ための手立ての工夫や、上位のモチベーションにつなげる支援の工夫などが必要なこと、「なぜ、何のために学ぶのか」「学ぶとどんな力がつくか」を実感として伝えること、活動、体験を「確かな経験」として積み上げることが肝要だと確認しました。これらのことは、校種の区別なく、共通して大事にしたいことではないでしょうか。
琴の浦高等特別支援学校には、生産流通科、サービスビジネス科の2つの学科があり、それぞれ農業・流通・食品衛生、サービス・事務オフィス・ビルメンテナンスの3つのコースがあります。授業参観をとおして生き生きとやりがいをもって取り組む生徒たちの姿に初任者も感銘を受けた様子でした。その後の協議では、「褒められ、認められる経験を意図的に作りたい」「誰かのために何かをするのがうれしい、喜んでもらいたいなどの気持ちを積み重ねていけるようにする」「生徒が役割を担い、他者から認められ、達成感ややりがいにつながる経験を大切にしたい」「自分も、職業人としての姿を、モデルとなるよう示していきたい」といった意見が交わされました。
鳥取県では、教育の基盤をふるさとキャリア教育においています。各校で、鳥取県に誇りと愛着を持ち、自立し、自分らしい生き方を実現するとともに、将来にわたりふるさと鳥取を思い、様々な場面でふるさと鳥取を支えていくことができる人材が育つことを願ってやみません。
10月16日に、関西国際大学教授、中尾繁樹氏を講師にお迎えし、【特別支援教育(1)(自立活動)】「個が生きる!より豊かに生活するための自立活動の指導」研修を実施しました。
自立活動の基本的な考え方、教育課程上の位置付け、指導の特色、特徴等、自立活動について深く学ぶとともに、実態把握の視点についても学ぶことで、教師として多くの視点を持ちながら目の前の子どもの背景を探ることの重要性について、改めて考える時間としました。また、UD(ユニバーサルデザイン)の考え方と自立活動の考え方との親和性や外部機関の専門家や保護者と連携を図り、一人一人の子どもたちの背景をチームで共有することの大切さについても学びを深めました。
的確な実態把握に基づいた指導体制ができると、様々な問題の未然防止につながります。そのためには、次の3つの「みる」と「力」の獲得が必要となります。
- 「目でみる」の獲得
・子どもを的確に観察するということ。その観察を裏付ける知識を学習し、子どもを様々な視点で見ようとする努力が必要になる。すなわち「知識力」である。
- 「手でみる」の獲得
・子どもを指導するときの感性ということ。様々な障がいのある子どもたちを指導するときには手で触って、子どもたちの体を動かすことになる。その時に手の感触をより確かなものにし、間違った独りよがりの指導にならないよう、努力や柔軟性が大切になる。通常学級では授業展開力にあたる。すなわち「実践力」である。
- 「心でみる」の獲得
・子どもの悩みや困り感に共感することができる教師になるということ。共感できて初めて子どもとうちとけあい、受け入れることができる。人として最も大切な力になる。すなわち「感じる力」である。
個々のニーズをしっかりと受け止め、根拠を明らかにして指導目標及び指導内容を設定し、明確な評価を実施するとともに、常に目の前の子どもに適した指導は何なのかを考え、私たち教師ができることからはじめること、小さな一歩を踏み出すことの価値について再認識できたように思います。
10月5日に、兵庫県立山の学校校長、田中裕一氏を講師にお迎えし、「新任教頭研修(全)(研修番号6)」、「副校長・教頭研修C」、「事務主幹・事務長研修C」を実施しました。「特別支援教育の視点を踏まえた学校運営のあり方」と題して、インクルーシブ教育システム構築に向けて必要な、保護者や関係機関との連携、組織的対応、校内体制のあり方について理解を深め、学校の実態に応じた具体的な取組について考える研修としました。
特別支援教育を柱とした学校経営を進めるための管理職の役割は、校長のリーダーシップの下、学校内での教育支援体制の構築・運営を図るとともに、学校内の体制について児童等・保護者や地域へ周知を行うことです。具体的には次のような役割があります。
- 校内委員会の設置と運営
- 特別支援教育コ-ディネーターの指名と校務分掌への位置付け
- 個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成と活用・管理
- 教職員の理解推進と専門性の向上
- 専門スタッフの活用
- 保護者との連携
- 専門家・専門機関との連携の推進
- 適切な情報の引継ぎ
分掌配置や校内OJTを意図を持って推進することにより人材育成を図ること、教育・家庭・福祉がつながり連携を保つことの重要性についても確認できました。
そして、管理職として、誰一人取り残さない学校運営を行うためのヒントとして、「Research」「Target」「Outreach」の3つの言葉をいただきました。
○「Research」(リサーチ)
自校(自分)や他校(他者)と比較する、地域や教員のニーズを把握する、教育以外の情報も含め、最新情報へのアップデートをするといった情報収集をすること。
○「Target」(ターゲット)
相手は何を望んでいるのか、何に困っているのかを考えること。
○「Outreach」(アウトリーチ)
「Research」&「Target」で、伝える相手を意識した情報収集を行い、お互いに半歩踏み出す勇気を持つこと。そして、最後まで諦めないこと。
特別な配慮を必要とする児童生徒の的確な実態把握、適切な指導、支援に向け、教職員全体の専門性を向上させるために必要な取組について、管理職として、学校の実態を踏まえながら考える機会となったとすれば幸いです。
9月12日に、文部科学省初等中等教育局視学官 安部恭子様を講師にお迎えし、【小学校・中学校特別活動】「よりよい合意形成を図り、実践する学級活動」研修を実施しました。
講義『学級活動において育成をめざす資質・能力』では、特別活動において育成をめざす資質・能力について、具体的にお話しいただきました。子どもたちが実生活や実社会に活用できる力として育んでいくことが大切であることや、子どもたちが学級活動や児童生徒会活動などで、みんなで知恵を出し合ってよりよいものにしていくことをめざしたり、これまでに身に付けた力を発揮、向上させたりすることが大切であることなどです。
特別活動において育成すべき資質・能力の重要な視点は次の3つです。これらを深く関連づけながら指導していく必要があります。
○人間関係形成…違いを認め合い、みんなと共に生きていく力を育てる
人間関係が大切だということは特別活動以外でも学ぶ場所はありますが、単に「仲よくしましょう」ということではありません。重要なのは、子どもたち自身が「集団の中でよりよい関係を築いていきたい」と思えるような学級や学校にしていくことです。
○社会参画…よりよい集団や社会をつくろうとする力を育てる
参画意識の低さは喫緊の課題です。子どもたちがやらされている活動にならないように、「こういう学級活動をしたい」「こういう学校にしたい」「こういう社会をつくりたい」という思いを持てるように指導していくことです。
○自己実現…なりたい自分に向けて頑張る力を育てる
自己実現は自分らしい生き方の実現ということです。なりたい自分に向けて努力ができる力を育てることです。
これらの力を育むために学級活動では、話合いを基盤にしながら課題解決をするために必要な力を身に付けるものです。
○学級活動(1)…児童生徒が問題を発見し、「共同の問題」(議題)を選定する。解決方法等について話し合い、折り合いをつけて、集団として「合意形成」を図る。
○学級活動(2)(3)…教師が「共通の問題」(題材)として課題を設定する。教師の指導のもと、解決方法について話合いを通して考え、自己の課題や努力目標を一人一人が「意思決定」する。
よりよい合意形成のためには、
「安易な多数決で結論を出さない」「多数意見でまとめていくことが基本だが、少数意見も尊重し、生かす工夫はないか考える」「それぞれの意見を比べ合いながら、折り合いをつけて合意形成を図る」といったことが大切です。
また、身に付けた力が各教科等にも生かされると双方向の学び合いができるようになります。そのために教師が教科と特別活動の往還をより意識しながら、学習過程の中でよりよい人間関係を築き、学び方を身に付けていくことが重要です。
子どもたちが集団や社会の形成者として自主的・実践的に取り組み、多様な他者と協働するさまざまな集団活動の意義を実感させながら、みんなで考えて、みんなで話し合って、みんなで決めたことを、みんなで行うことができる力を育んでいく必要があります。
学校は子どもにとって一番身近な社会です。そして、よりよく生きることを学ぶ場所でもあります。「自分のよさ」を集団の中で見いだしながら、自己有用感をもって生き生きと活動する子どもたちを育てていきたいものです。
9月5日に、大阪医科薬科大学LDセンターの言語聴覚士、西岡有香様を講師にお迎えし、【特別支援教育(2)(発達障がい)】「発達障がいのある児童生徒へのソーシャルスキル指導の実際」研修を実施しました。
前半の講義では、ソーシャルスキルの基本理解を踏まえ、一人一人の子どもについての検査や行動観察による情報収集、アセスメントの重要性について御指導いただきました。子どもは、どのようなことで困っているのか、行動観察をとおして考えることが重要です。診断名ではなく、症状(特性)で考えることや一人一人の言葉の力を把握しておくことが大切なのです。
後半は、指導の実際について演習を交えて講義をいただきました。例えば、コミュニケーションスキルの指導では、それぞれの発達段階で必要なスキルは次のようなものです。
- 低学年から高学年のコミュニケーションスキル
- 発表のルールを守る
- 相槌、返事をしながら聞く
- 話題にあった質問をする
- 同じ話題・関係のある話題で話す
- 自分の意見を言う
- 高学年から青年期のコミュニケーションスキル
- 場面に応じたことばの使い分けができる
- 会話を維持できる
- 社会にでたときに困らないために・・・
あいさつができる/感謝、謝罪のことばが伝えられる/わからないことを聞いたり、 確かめたりできる
このような支援・配慮をしながら子どもの「できる」を増やしていきます。ただし、指導には長い時間が必要なので、大人が焦らず根気強く取り組むことが大切です。また、高学年以降になると自分の特質を知り、合理的配慮を求める力をつける自己理解が大変重要になります。
子どもたちにとって、いちばん身近である私たち大人がモデルとなるので、子どもたちが望ましい行動を取れるように、私たちも望ましい姿を示していきたいものです。