昨年12月、12年振りに「生徒指導提要」が改訂され、「生徒指導とは、児童生徒が、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことである」と定義されました。目前の問題に対応するといった課題解決的な指導だけでなく、発達・成長を促す指導等や予防的な指導を行う積極的な生徒指導の充実が強調されました。
6月12日(月)に開催した新任生徒指導担当者研修(小・中・義・特)では、この考え方を基に、児童生徒の自己指導能力の育成に向けて取り組むことを明確にするために、事例検討の演習を行いました。対象者からは、次のような振り返りのコメントがありました。
・生徒指導の重要な役割に、発達支持的生徒指導や未然防止教育があることを再確認できた。何か事案が起こってしまってからではない生徒指導としての役割を学ぶことができた。この2つを意識して指導を行いたい。
・何をすればよいのか、イメージを具体化することができた。明日から、終礼や集会などの際に、未然防止のための働きかけを行っていきたい。
・第三者からの情報提供における生徒指導主事としての対応を考えることができた。対応が必要になったときに、アセスメントをしっかりと行い、話し合いにより学校としての対応を検討し、実行していきたい。
今回の「生徒指導提要」の改訂のポイントの一つとして「チーム学校」による指導体制の構築を求めていることも挙げられます。特に、いじめ、不登校等の課題については、組織的な対応は必須です。各学校において、生徒指導主事等を中心にした組織体制は機能しているでしょうか。
学習指導要領では、学習指導と生徒指導は相互に深く関わるものであり、学習指導と関連付けながら生徒指導の充実を図ることが重視されています。学習指導要領の趣旨を実現するためには、発達支持的生徒指導の考え方は重要です。改訂された「生徒指導提要」の考え方は、各学校で共有されているでしょうか。
児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・能力の発達を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる自己実現を支える生徒指導が、各学校において日々行われることを願います。
生徒指導提要はこちらから御覧いただけます。
生徒指導提要へのリンク(文部科学省)
6月6日(火)に「新任道徳教育推進教師研修(小・中・義・特)」及び【小学校・中学校道徳2】「学校における道徳教育と道徳科の授業づくり」研修を実施しました。
研修の中で、前調査官である十文字学園女子大学の浅見哲也教授に御講義いただきましたので、その中の授業づくりと評価のポイントについて紹介します。
<授業づくりのポイント>
1 指導の意図を明確にするためにねらいとする道徳的価値の意義を理解し、指導の考え方を明確にする。
例えば、「規則の尊重」という内容項目でも、発達段階によってどこを考えて授業をすることが大事かが違う。それを学習指導要領解説を基にしっかり理解することが大切。
2 指導の意図を明確にするために日頃の教育活動を振り返り、子どもの実態を明確にする。
例えば、「きまりを守れない」という子どもの実態があるとき、「きまりがあることに気づかない」、「きまりの必要性が感じられない」等、その問題点がどこにあるのかを明確にする。
3 指導の意図を明確にするために教材をどんな風に活用し、どの場面でどんな発問をするかを明確にする。
また、道徳性を構成する諸様相(道徳的判断力,道徳的心情,道徳的実践意欲と態度)の中で、どの様相に焦点を当てるのかを考えることが大切です。同じ教材を活用するにしても、心情を育てるのであれば心情を問う発問、判断力を育てるのであれば考えを問う発問が多くなるかもしれません。
<評価のポイント>
〇大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること
〇他の児童生徒との比較による評価ではなく、児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め、励ます個人内評価として行うこと
〇学習活動において児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかといった点を重視すること など
教師の自らの授業を振り返る評価の観点、児童生徒の学習状況を見取る評価の視点は、どちらもつながっているもので、指導に生かされ、児童生徒の成長につながる評価でなくてはなりません。このことを指導と評価の一体化と言っているのです。児童生徒によりよく生きるための基盤となる道徳性を育む道徳教育と道徳科を改めて考えてみませんか。本記事をそのきっかけにしていただけると幸いです。
5月29日(月)に中堅教諭等資質向上研修(小・中・義・特)(研修番号2)を実施しました。
鳥取県公立学校の教員としての資質の向上に関する指標の「教職に必要な素養」に関わる内容であるコーチングコミュニケーションの考え方、スキルを理解し、メンターとして若手教員との関わりを見直したり、教職員同士で関わり合い、高め合ながら組織の活性化を促進したりできるようになることをねらいとして、株式会社STC代表取締役の槌間勢津様に、御講義いただきました。
コーチングは、相手の中にある相手の可能性を引き出し、自発的な行動を促進させ、その人の夢や目標の実現をサポートするコミュニケーションスキルです。相手の可能性を信じ、相手の中にある答えを引き出し、一緒にするという気持ちと姿勢で相手の目標達成のサポートをすることです。
例えば、課題解決型コーチングでは、まず、現状を具体的に聴き、解決すべきテーマを明らかにします。次に、未来志向で、あるべき姿、どうなっていたいと思うかを確認します。さらに、課題解決のための資源と選択肢を引き出し、優先順位を決めたり、具体的な行動計画に落とし込んだりした後に、第一歩を踏み出すところまでを共に考えます。
具体的な演習をとおして実感を伴う理解を深められた対象者からは、次のような振り返りのコメントがありました。
・ただ単に聞くのではなく傾聴の姿勢を大切にし、思いを汲み取り、共感し、今後の対応など未来を見据えていくことを進めていく。
・自分の中にある無意識の偏ったものの見方や思い込みに気づいた。「観る」「聴く」「伝える」を大切にしながら、相手とコミュニケーションをとって目標達成のサポートをしていきたい。
・相手の話を聴くということへの意識の低さや、一方的に伝えるだけになってしまっていたコミュニケーションを反省した。次回、自分の考えを提案する際には、相手の意見を引き出すことを意識し、双方向のコミュニケーションを行うことで、校内がより活性化するように努力したい。
本研修では、組織の活性化に向けて活用することを目的としましたが、児童生徒への関わりにおいても活用できるスキルです。ぜひ参考にしてください。
5月26日(金)に新任校長研修(研修番号3)及び校長研修(B日程)(午前のみ)を実施しました。
午前は、今年度新たに「鳥取県公立学校の校長としての資質の向上に関する指標」に加わった2つの資質・能力―学校の状況や課題を適切に把握する「アセスメント能力」、学校内外の関係者の相互作用により学校の教育力を最大化していく「ファシリテーション能力」について、学校法人湘南学園の住田昌治学園長に御講義いただきました。
リーダーに最も求められることは、「真の課題が何か」を見極める力。住田学園長の凄さは、この的確な問題分析力であり、それを教職員に問いかけ、聴きながら主導権を相手に渡し、モチベーションを高める力をお持ちであることでした。相手が気楽にまじめな話ができるような仕掛けで場づくりにも工夫を凝らしておられました。ファシリテーションでめざすのは、人と組織の活性化。様々な意見を引き出しつつ、対立する意見もポジティブに受け入れられる組織文化をつくることです。
つまり、校長としての仕事のポイントは、教職員が自走できるように導き、教職員の力で成果が出せるよう教職員が内に秘めている力を最大限に引き出すことのようです。
午後は、学校経営に求められる学校組織マネジメントについて、「変わる」「見つける」「つなぐ」の3つ視点等をもとに、国士舘大学の北神正行教授に御講義いただきました。午前同様、「心理的安定性」のある組織、つまり、風通しの良い職場をつくることが必要であることが一つのポイントでした。
対象者の振り返りには、次のようなことが記載されていました。
・1×1=1(個業型組織)ではなく、1+1=2+α(協働型組織)となるように、1年をとおして教職員との対話や会議の際に、学校の方向性をみる基準の一つとしていきたい。
・学校の有する資源を見つけ出し、それらを活用・開発するという視点。まずは、現状を把握し、情報収集を行って実践していきたい。
・要所要所で、学校教育目標を確認し、チームとしての方向性がぶれないようにする。また。常に、すべての職員が当事者意識が持てるような声かけ、役割の確認をしていきたい。
各講義動画をGoogleサイトに掲載していますので、ぜひ御視聴ください。
Googleの各講義動画へのリンク
小学校・義務教育学校 中学校・義務教育学校・高等学校
5月15日(月)に6年目研修(研修番号1)を実施しました。6年目研修のねらいの1つは、学習指導における実践的指導力の充実です。特に、指導と評価の一体化に焦点化して進めます。
小学校・義務教育学校は明星学苑明星小学校の細水保宏校長、中学校・義務教育学校、高等学校は京都大学の西岡加名恵教授に御講義いただきました。各講義からの学びとして、例えば次のようなことが挙げられます。
【小学校・義務教育学校】
授業づくりのポイントは、児童の「知的好奇心」と「学びを楽しむ心を」大切にすることであり、そのために、教師は結果だけではなく、経過を捉えて児童の変容を見取る主治医のような役割を担うことです。
【中学校・義務教育学校・高等学校】
「知の構造」と「評価方法」を対応させながら、必要な評価方法を選ぶ、評価方法を組み合わせること。「本質的な問い」から「永続的理解」を導くために「パフォーマンス課題」を設定することで、生徒にシナリオとミッションを与え、主体性や創造性を引き出しながら学びの進化や応用力を育むことなどです。
各講義動画をGoogleサイトに掲載していますので、ぜひ御視聴ください。
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