背景
農業における農地法面・畦畔の維持管理作業は、機械化や省力化の難しい重労働です。特に、中山間地域の農地は法面が平地に比べ大きく、草刈の負担が非常に大きいため、中山間地域の農地の維持や担い手農家等への農地集積に取り組む際の大きな妨げとなっています。
県内全域に中山間地域が広く分布する鳥取県では、農業者の高齢化も深刻なため、農地法面の管理省力化を図ることが喫緊の課題となっています。
そこで、本事業ではセンチピードグラスというイネ科の植物を法面に被覆させることで草刈回数を低減させ、前述の課題解決に加え、営農意欲の向上や余暇時間を活用した地域振興に期待するものです。
法面管理省力化の仕組み
センチピードグラスは芝の仲間で、地面を這うように拡がることから和名でムカデ芝と呼ばれます。高さ30cm程度まで成長し密集して影を作るため、他の雑草の成長を抑制する働きがあるとされています。
省力化に向けた準備作業においては、除草剤散布や焼却等を適切に行うことで、いかに他の雑草を繁茂させず、センチピードグラスの成長拡大をサポートできるかがポイントになります。
実証試験
事業化に先駆けて、鳥取県では平成28年度から29年度にかけてこのセンチピードグラスを用いた法面管理省力化の実証試験を県内東・中・西部の3地区で行いました。
実証試験では、除草剤散布、草刈り、焼却といった準備作業の回数およびタイミング、種子の法面への吹き付け方法などの検証を重ね、効果的かつ効率的に法面全体へセンチピードグラスを被覆させるための作業手順を検討しました。
その結果、最も高い効果の得られた口細見地区(鳥取市)では、通常年4~6回程度行っていた法面の草刈りが、センチピードグラスによる法面被覆後は年1~2回まで低減されました。