1 「強力」とは
鳥取にしかない酒米「強力」は、粒は大きく、山田錦や雄町などと同じく吟醸酒造りに適した線状心白を持つ稀有な酒造好適米です。大正時代に鳥取の在来種から選抜された「強力」は、背丈が高く育てにくいため、昭和30年にいったん栽培が途絶えました。その後、幻の「強力」を復活させ鳥取にしかない地酒を造ろう、という蔵元の思いから、昭和61年に鳥取大学農学部で原種保存されていた僅か一握りの強力にたどり着き、関係者の尽力により酒が仕込めるまでの収穫量に増やす努力を経て、平成元年にその醸造が復活しました。そして、「強力」を鳥取の地酒ブランドとして守るため「強力をはぐくむ会」を立ち上げ。徐々に「強力」を使う酒蔵が増え、現在では9蔵が「強力」を使った酒造りを行っています。
精米歩合・酵母等により違った個性を見せる、ポテンシャルの大きな酒米「強力」。ぜひ様々な蔵の「強力」を飲み比べてみてください。
※心白:米の中心部に白く不透明に見える部分。心白は麹菌が入り込みやすくもろみによく溶け、酒造りにとって好ましい性質とされている。
「強力をはぐくむ会」とは
酒蔵会社、農家、大学、酒販店等が一緒に強力の栽培から酒造りまでを行い、種苗やブランドを保護するための会。強力を復活させた蔵元等が強力を独占するのではなく切磋琢磨し合うことが強力という財産を守ることにつながるという思いから平成10年に立ち上げられた。
2 商品紹介
各蔵の「強力」を使った日本酒を一部紹介します。ぜひ様々な蔵の強力を飲み比べてみてください。
◇中川酒造 「いなば鶴 純米大吟醸 強力」
炭素濾過無し。香りはおとなしいが、苦味・酸味・渋味・甘味が渾然一体となった濃厚な味わい。
◇太田酒造場 「辨天娘 純米 強力 生酛」
杜氏が地元で栽培した強力を使用。温めて飲むと舌をグッとつかまれるような余韻がある。
◇山根酒造場 「日置桜 純米吟醸 伝承強力」
独特の酸味を持つ強力米の特徴を活かした、何層もの味わいのある造りの完成度の高いお酒。
◇元帥酒造 「純米大吟醸 くらよし白壁土蔵」
水にこだわり伝統の技で醸した、バランスのとれたうまみとのど越しのよさ、自然のおいしさを感じるお酒。
◇大谷酒造 「鷹勇 純米吟醸 強力」
「強力」ならではの軽快な酸味が特徴で、燗にすることでコクが増します。
◇稲田本店「純米吟醸 いなたひめ 強力」
ふくらみのある果物系の香りと米の旨味を感じられる、弊社一番人気のお酒です。
◇千代むすび酒造 「千代むすび 純米吟醸強力50」
華やかな香りになめらかな味としっかりした旨みと酸味が心地良い、蔵の代表作。
◇久米桜酒造 「特別純米酒 強力」(黒ぼく強力)
大山の黒ぼく土壌で自社栽培した強力米をミネラル豊富な地元の水で醸した、強力の旨味と酸味を楽しめる酒。
7銘柄以上を強力で仕込む蔵も!裏のラベルで原料米をチェックしてみましょう。
3 強力Q&A
強力について、強力をはぐくむ会 幹事の中川酒造蔵元・中川氏に伺いました。
Q.強力米が一般の酒米と違う点はどこですか?
「酒米の中で線状心白を持つのは3種だけ。強力と山田錦と雄町。山田錦の祖先は雄町であるが、雄町は鳥取の大山から農民が岡山に持って帰った種と伝わっており、強力と雄町は性状もよく似ていることから雄町と強力は兄弟のようなもの。強力は山田錦のルーツだと考えられます。」
Q.強力米の特徴は?
「最大の特徴は鳥取にしかないこと。そして、線状心白を持つ強力は高精白に耐えられること。一般の酒米は心白の組織が粗いから脆いのです。精米とは米粒の周りのタンパクを取り除く作業ですが、稲に窒素肥料を与えると収量が多くなるがタンパクが多くなってしまうというデメリットがあるので、農家さんには窒素肥料を使わないように頼むなど、栽培から一緒に取り組んでいます。収量を狙うと穂が重くなり背の高い強力は倒れてしまう、ということもあります。」
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