鳥取県東部地域の血液疾患の基幹診療科として、個々の症例に最適な治療を提供しています


血液内科と血液疾患

 『血液内科』といっても、どのような疾患を扱う診療科なのかご存知のない方もおられることと思います。

 私たちの血液の中には、赤血球・白血球・血小板などの細胞があり、それぞれ酸素を運んだり、細菌やウイルスと戦ったり、止血を行ったりと重要な働きをしています。そしてこれらの細胞すべては、骨の中心にある『骨髄』という組織で毎日造られています。『血液内科』で担当する『血液疾患』とは、この骨髄に由来する細胞に何らかの異常が生じる疾患の総称です。
 私たちが日常診療で扱う疾患は、白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など悪性疾患(造血器腫瘍)が中心ですが、貧血、血小板減少症、凝固異常症など良性疾患(非腫瘍)にも幅広く対応しています。
 造血器腫瘍は他の固形腫瘍(胃がん・肺がん・乳がんなど)と比べるとその頻度は低く、身近に感じられないかもしれません。しかし高齢化が加速する中、その数は明らかに増加しています。一方で、造血器腫瘍に対する診断技術と治療は日々目覚ましい進歩を続けており、常に最新の専門的知識をもっての対応が求められます。


診療内容

 日本血液学会から示される『造血器腫瘍診療ガイドライン』は、前述のような急速な進歩に合わせ、頻繁に改訂されています。当科では基本的にはこのガイドラインに沿って、その時点で最もエビデンスの高い標準治療を行っています。ただし、個々の患者さんの病態や治療に対する希望は多様で、ガイドラインの内容が常にベストとは限りません。そのため当科ではまず病態について詳細に説明を行い、治療選択肢を提案させていただきます。その上でご家族を含めて十分に話合いを重ね、個々に最適と考えられる治療を選択していただく方針としています。

造血器腫瘍の治療は『化学療法』と『造血幹細胞移植』が中心となります。

  • 化学療法
    化学療法とは抗がん剤を複数組み合わせた薬物治療です。造血器腫瘍は手術による切除で完治する疾患は極めて少なく、化学療法が中心となります。治療薬開発の進歩は著しく、腫瘍細胞を特異的に攻撃する分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など新たな薬剤が次々と臨床応用可能となり、これまで難治とされていた疾患の治療成績も向上しつつあります。

  • 造血幹細胞移植
    造血幹細胞移植は、強力な化学療法(+放射線照射)を行った後に、健康なドナーの『幹細胞(全ての血液細胞を造りだすことができる細胞)』を移植して、造血の再構築を図るとともに原疾患の治癒を目指す治療です。造血幹細胞移植の対象となる患者さんは以下の通りです。
    • 化学療法のみでは完治が望めないが、幹細胞移植を行えば完治の可能性ある
    • 幹細胞移植に耐えうる状態である(年齢・合併症・臓器の予備能など)
    • HLA(白血球の血液型)が適合したドナーが存在する(同種移植の場合)

    幹細胞移植は選択するドナーにより以下の2種に分類されます。
    • 自家移植:自分自身の幹細胞を移植に用いる
    • 同種移植:自分以外のドナーの幹細胞を移植に用いる
    さらに移植に用いる『幹細胞』を、どこから採取するかによって
    • 骨髄移植
    • 末梢血幹細胞移植
    • 臍帯血移植
    の3種類に分類されます。
    骨髄からは、全身麻酔下に腸骨(骨盤)から採取します。末梢血からは、血球分離装置を用いて血管から採取します。

 当科では血縁者(主に同胞)をドナーとした移植のみでなく、日本造血細胞移植学会認定移植施設として、骨髄バンクや臍帯血バンクを介しての非血縁者間幹細胞移植も施行しています。また最近ではHLA半合致移植(HLAが半分しか一致していない同胞や親子からの移植)にも取り組んでいます。また日本骨髄バンク認定採取病院として、非血縁者骨髄採取(バンクドナーからの採取)にも協力しています。

 血液内科病棟は2018年12月に新築された病院の11階南にあります。東側が一般病床(20床)のエリア、西側はISO7レベルの空気清浄度が確保される22床のエリアです。後者は化学療法や原疾患により、白血球が減少して感染症合併リスクの高い患者さんの治療に使用します。そのうち2床がISO5レベルの無菌ユニット個室で同種移植の際に使用しています。

 血液疾患は難治性で治療に長期間を要するものが多く、患者さんの精神的・肉体的負担は計り知れません。また休職など社会経済的な問題も生じます。血液疾患診療は医師のみでなく、歯科医師、看護師、薬剤師、検査技師、理学療法士、臨床工学士、放射線技師、歯科衛生士、栄養士、ソーシャルワーカーなど多職種が協力したチーム医療が不可欠な医療です。私たちはチーム一丸となって、当地域で血液疾患と闘われる方々のお役に立てるよう最大限の努力をしています。

 

診療実績

■ 血液疾患新規症例数

  2019 2020 2021 2022
急性骨髄性白血病 16 15 12 17
急性リンパ性白血病 3 1 2 3
慢性骨髄性白血病 3 4 4 7
骨髄増殖性疾患 3 5 8 11
骨髄異形成/骨髄増殖性疾患     2 1
慢性リンパ性白血病 3 2 2 3
骨髄異形成症候群 14 9 12 11
悪性リンパ腫 49 59 75 74
多発性骨髄腫 16 11 11 9
再生不良性貧血   4 2 2
免疫性血小板減少症 18 14 15 14
その他 10 11 11 12
総計 135 135 156 164

■ 血液疾患入院患者数
延べ人数(同一患者反復含む)

  2019 2020 2021 2022
急性骨髄性白血病 64 52 71 100
急性リンパ性白血病 22 10 12 8
慢性骨髄性白血病 6 4 2 1
骨髄増殖性疾患 1 2 2 2
骨髄異形成/骨髄増殖性疾患     2 1
慢性リンパ性白血病 3 9 3 7
骨髄異形成症候群 43 23 39 68
悪性リンパ腫 289 317 386 468
多発性骨髄腫 49 74 55 107
再生不良性貧血 2 2 4 6
免疫性血小板減少症 18 10 8 8
その他 8 14 10 8
総計 505 517 594 784

■ 造血幹細胞移植件数

  2019 2020 2021 2022
自家末梢血幹細胞移植 9 9 4 5
同種骨髄移植 7 2 2 2
同種末梢血幹細胞移植 3 2   2

メッセージ

血液内科 医師  スタッフ一同、患者さん、ご家族とともに同じ目標に向かい日々邁進しております。『当科で治療して良かった』と評価いただけることが、我々の最高の喜びです。

 

>>造血幹細胞移植推進地域拠点病院


田中 孝幸

(部長)1985年卒
専門分野 血液(白血病・悪性リンパ腫・骨髄腫など)
所属学会
資格
  • 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
  • 日本血液学会 血液専門医・指導医
  • (財)骨髄移植推進財団 調整医師
  • 日本医師会 認定産業医
  • 鳥取大学医学部 臨床教授
  • 日本造血・免疫細胞療法学会 造血細胞移植認定医

小村 裕美

(部長)1995年卒
専門分野 血液(白血病・悪性リンパ腫・骨髄腫など)
所属学会
資格
  • 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
  • 日本血液学会 血液専門医
  • (財)骨髄移植推進財団 調整医師
  • 日本造血・免疫細胞療法学会
  • 日本輸血細胞治療学会

橋本 由徳

(部長)2004年卒
専門分野 血液(骨髄増殖性腫瘍・白血病・悪性リンパ腫・骨髄腫など)
所属学会
資格
  • 日本内科学会 認定内科医、総合内科専門医、指導医
  • 日本血液学会 血液専門医、指導医
  • 日本造血・免疫細胞療法学会 造血細胞移植認定医
  • (財)骨髄移植推進財団 調整医師
  • 日本医師会 認定産業医
  • 骨髄増殖性腫瘍患者・家族会(MPN-JAPAN)医学顧問
  • 日本リンパ網内系学会
  • 日本臨床腫瘍学会
  • 日本エイズ学会

細田 早郁

(医師)2021年卒
専門分野 血液内科
所属学会
資格
  • 日本内科学会
  • 日本血液学会
  • 日本造血・免疫細胞療法学会
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