血糖コントロールのための「Patient-Centered Approach」


糖尿病は、確かに初期には目立った自覚症状もなく、ありふれた病気(Common Disease)かもしれません

 鳥取県立中央病院は、地域の中核病院として高度急性期医療を提供する事を病院の基本方針としていますから、目立った自覚症状もなく、健診で指摘される、ありふれた病気である糖尿病のことは、もしかしたら当院を受診される皆さんの頭の中からすっぽり抜け落ちてしまっているかもしれません。ところがコントロール不良状態の糖尿病は高度急性期医療の治療成績悪化をもたらしうる基礎疾患の一つでもあります。


糖尿病は進行すると様々な合併症を発症しますし、加齢に伴って増加する多くの疾患の有病率が明らかに高くなります

 日本糖尿病学会は、糖尿病治療の目標として、従来から血糖、血圧、脂質代謝の良好なコントロール状態と適正体重の維持、及び禁煙の遵守を通して、糖尿病の合併症の発症、進展を阻止し、健康な人と変わらない寿命の確保を掲げていましたが、2019年の診療ガイドライン改訂を受けて、従来の目標に加えて、高齢化に伴う併存症(認知症、フレイル、サルコペニア、悪性新生物など)の予防管理、或いは糖尿病が原因となる「スティグマ」を取り除くためのアドボカシー活動の必要性を提示しています。


糖尿病の病態は患者さんの数だけ存在します

 糖尿病は、「インスリンの作用不足による慢性の高血糖状態を主張とする代謝疾患群」であると学術的には定義されています。ただ糖尿病と一口にいっても、インスリン分泌能(血糖を制御する物質であるインスリンを作る能力)、インスリン抵抗性(インスリンの効き具合)の程度は患者さん毎に異なりますし、食事、運動といった生活習慣も、患者さん毎に異なります。合併症や併存疾患の状態も皆さんそれぞれ異なります。糖尿病の病態は、それら全てが積算されたものですから、患者さん毎にアプローチの仕方を変えていかなければ、コントロールを行うことは容易ではありません。


個別性に対応するためのチームアプローチ

 十人十色の患者さんと向き合い、個々の病態に応じた「Patient-Centered Approach」を実現するためには、多職種から構成されるチームアプローチが有効だとされています。当院では医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、歯科衛生士、視能訓練士から構成される糖尿病サポートチーム(DST:Ditabetic Support Team)のメンバーが中心となり、糖尿病療養指導を展開しています。


診療内容

 糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの代謝性疾患を中心に診療しています。甲状腺疾患などの内分泌疾患も併せて診療しています。
糖尿病については1型糖尿病、小児思春期糖尿病、妊娠糖尿病の診療も行っています。


糖尿病教室

当科では水曜日開始、火曜日終了の1週間コースで糖尿病教育入院プログラムを実施しています。



メッセージ

 糖尿病の療養指導に従事する医療従事者のうち、日本糖尿病療養指導士認定機構が認定している5職種(看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師)全てが在籍している施設は、鳥取県内では当院と米子市の山陰労災病院の2施設のみです。
 また糖尿病教室等で療養指導に従事している歯科衛生士、視能訓練士にも、地域糖尿病療養指導士(鳥取県糖尿病療養指導士)取得者が在籍しており、より質の高い糖尿病療養指導を提供するための体制整備を心がけています。

糖尿病内科 医師

楢崎 晃史

(部長)1993年卒
専門分野 糖尿病代謝内科
所属学会
資格
  • 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
  • 日本糖尿病学会 専門医・指導医
  • 日本糖尿病協会 認定医
  • 日本病態栄養学会 専門医・指導医
  • 日本スポーツ協会 公認スポーツドクター

村尾 和良

(部長)1999年卒
専門分野 糖尿病代謝内科
所属学会
資格
  • 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
  • 日本糖尿病学会 専門医
  • 日本糖尿病協会 認定医
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医

徳川 慎ノ介

(医師)2021年卒
専門分野 糖尿病・内分泌・代謝内科
所属学会
資格
  • 日本内科学会
  • 日本内分泌学会
  • 日本糖尿病学会
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