(最終更新日:2024年10月11日)
脳外科疾患全般に対応し、脳卒中など緊急性の高い疾患を優先的に治療しています
一次脳卒中センターに認定されました
令和元年(2019年)9月に循環器病対策基本法に基づき、日本脳卒中学会により一次脳卒中センター (Primary stroke center : PSC) として当院が公式認定されました。
鳥取県東部地区では2022年4月1日現在当院のみであり、脳卒中に対して24時間365日対応可能な病院であるということが、一般市民や医療従事者の方々に初めて見える化されました。
脳神経内科、リハビリ部門、看護部門、患者支援センターとの密接な協力体制下に、当科統括部長が脳卒中センター長を兼務しています。
一刻を争う脳卒中(その中でも特に脳梗塞)患者さんの治療成績を少しでも改善するためには、貴重な超早期の治療機会を失わないため、発症早期から一次脳卒中センターへ直接受診ないし搬送されることが望ましく、今後は救急搬送体制の見直しが急ぎ必要と思われます。
令和3年 (2021年) 4月には上記法律に基づき鳥取県循環器病対策推進計画が策定されました。
対策推進計画の取り組むべき施策(計画書p.20)の中に、将来的には当院の一次脳卒中センターに脳卒中ケアユニット(SCU:ストロークケアユニット)を設けることなどの体制整備の方向性が明記されました。
鳥取県循環器病対策推進計画の策定(令和3年4月)/とりネット/鳥取県公式サイト (tottori.lg.jp)
今後、法律と県の推進計画に基づき市内急性期病院の役割分担をさらに進める必要があります。
日本脳卒中学会のホームページ
当院脳卒中センターのホームページ
外視鏡(オリンパス オーブアイ)が導入されました
2024年9月下旬に、鳥取県内で初めて、脳外科手術用システム ORBEYEが当院に導入されました。 従来の光学顕微鏡手術(マイクロ手術)の課題を多く解決した新たな手術機器です。
4K3Dモニターによる手術であり、専用の3D眼鏡を着用することで術者が見るのと同じ3D画像を手術室内の全員が共有可能です。近年進歩の著しい脳血管内手術や神経内視鏡手術はいずれもモニター手術ですが、ついにマイクロ手術もモニター手術に置き換えられようとしており、これからの脳外科手術の主流はモニター手術となることは間違いないものと確信しています。
この外視鏡を用いることで、手術の執刀から閉創までの全過程を一連のものとして鮮明に記録に残すことも可能となりました。医療安全や教育効果などの点でも大きなアドバンテージがあります。
脳神経外科領域においては久々の画期的な手術機器であるといえるでしょう。
当院では既に9月下旬から従来顕微鏡で行っていた手術を原則的に外視鏡手術に切り換えましたが、今のところ問題なく使用できています。もちろん症例によっては、今後も神経内視鏡手術や顕微鏡手術を選択ないし併用することもあると思います。少なくとも手術の選択肢の幅が広がったことは間違いないと言えるでしょう。
当科では、顕微鏡手術、外視鏡手術、内視鏡手術、血管内手術と、脳外科手術の主たる4つのモダリティーをすべて経験できますので、研修医、専門医前の先生などの修練にもお役立てできるのではないかと思います。
図1:第三脳室内腫瘍摘出術
脳専用アンギオ(血管撮影)装置を設置した脳専用アンギオ室がオープンしました
一次脳卒中センターの認定に時を合わせるがごとく、令和元年10月より脳神経血管内治療学会専門医1名が赴任し、令和2年3月末に当院に新しい脳専用アンギオ装置(GE: Innova IGS630)が導入され、従来の心臓内科と共用の汎用装置および共用のアンギオ室を使用した大変不自由な治療環境がこの度大幅に改善されました。
時間が勝負となる脳塞栓に対する血栓回収療法のみならず、くも膜下出血に対する脳血管内治療なども行いやすくなりました。脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻に対する塞栓術なども高性能、高画質な装置を使用することで、より安全に手術を行うことが可能です。
鳥取大学と常に密接な連携をとり、難易度の高い手術では鳥取大学の脳神経血管内治療学会指導医にも診療援助していただいております。
図2:クモ膜下出血急性期症例での脳動脈瘤コイル塞栓術
図3:脳動静脈奇形に対する血管内塞栓術
内視鏡専用手術室にて神経内視鏡手術が可能です
当科には、神経内視鏡学会技術認定医が1名在籍しています。
当科では、既に2009年から神経内視鏡手術を導入し症例を積み重ねてきました。
新病院では内視鏡専用手術室にて手術を行うことができます。
硬性鏡(OLYMPUS EndoArm、ARL STORZ Oi Handy Pro)、軟性鏡(OLYMPUS Videoscope VEF TYPE V)を2009年から使用しており、症例により併用手術を行います。HD、4Kやナローバンドイメージングにも対応し、高画質で安全な手術環境が整っています。Mitakaユニアームも使用可能。
ニューロナビゲーションシステムと連動した低侵襲手術が可能です。 症例によっては、内視鏡単独での脳腫瘍摘出術も行っています。
図4:4K内視鏡を用いた内視鏡単独脳腫瘍摘出術
術中蛍光脳血管造影、ニューロナビゲーション、電気生理学的モニタリングを併用した手術
当科では2009年に鳥取県内で初めて術中蛍光脳血管造影 (ICG videoangiography)を導入し、より安全確実となる脳動脈瘤クリッピング術やバイパス手術を行ってきました。
鳥取県東部地区では最も早く2010年よりニューロナビゲーション (BRAINLAB Koribli navigation system) を導入し、脳腫瘍の手術ではルーチンに使用し、安全性、正確性を高め、手術時間短縮にも寄与しています。
必要な症例には電気生理学的モニタリングを積極的に併用して神経脱落症状(合併症)の回避に極力努めています。
診療内容
脳血管障害(脳卒中)
クモ膜下出血、脳出血、脳梗塞
脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻
もやもや病、内頚動脈閉塞症、頸部内頚動脈狭窄症
海綿状血管腫、静脈奇形
脳腫瘍
良性脳腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫、血管芽腫、頭蓋咽頭腫、下垂体腺腫、ラトケ嚢胞、
コロイド嚢胞など)
悪性脳腫瘍(神経膠腫、上衣腫、胚腫、悪性リンパ腫など)
転移性脳腫瘍、頭蓋骨腫瘍
頭部外傷
急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷、外傷性クモ膜下出血、頭蓋骨骨折
慢性硬膜下血腫、びまん性軸索損傷
水頭症、嚢胞性疾患
急性閉塞性水頭症、続発性水頭症、特発性正常圧水頭症、先天性水頭症
くも膜嚢胞
機能的神経疾患
顔面痙攣、三叉神経痛、症候性てんかん
感染性疾患
脳膿瘍、硬膜下膿瘍、脳室炎
手術実績
年間手術件数(2023年10月1日~2024年9月30日): 311 例
直達手術: 193 例
頭蓋内腫瘍摘出術 |
15 |
脳動脈瘤クリッピング術 |
6 |
脳動静脈奇形摘出術 |
0 |
脳血管吻合(バイパス)術 |
3 |
内頚動脈血栓内膜剥離術 |
3 |
脳内血腫除去術 |
8 |
急性硬膜外血腫除去術 |
2 |
急性硬膜下血腫除去術 |
3 |
ICPモニター留置術 |
4 |
慢性硬膜下血腫穿頭ドレナージ術 |
74 |
脳室(腰椎)腹腔短絡(シャント)術 |
35 |
脳室外ドレナージ術 |
18 |
脳膿瘍排膿術 |
1 |
微小神経血管減圧術 |
5 |
減圧開頭術 |
1 |
脊椎脊髄手術 |
3 |
開頭生検術、頭蓋形成術その他 |
12 |
血管内手術 : 105 例
機械的血栓回収術 |
24 |
経皮的脳血管形成術 |
5 |
経皮的脳血管ステント留置術 |
29 |
脳動脈瘤塞栓術 |
33 (うちFDS 5) |
脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻塞栓術 |
7 |
栄養血管塞栓術 |
6 |
その他 |
1 |
神経内視鏡手術 : 13 例
脳室穿破術(水頭症手術) |
4 |
内視鏡下脳内血種除去術 |
9 |
メッセージ
脳神経外科では、2009年より低侵襲手術に力を入れており、脳血管内手術、神経内視鏡手術を積極的に行っています。悪性脳腫瘍に対しては手術、化学療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療を行い、治療成績の向上を目指しています。
2022年4月1日より常勤医師数増に伴い外来枠を増やし、月曜から金曜の毎日平日午前に外来診療を行うことになりました(初診の方は紹介状が必要です)。
診療所の先生方よりお気軽にご紹介いただけるように鋭意改善中です。 お急ぎの場合は午後であっても電話で御一報いただけますと、可能な限り対応させていただきます。