K-8 境水道大橋 境港市岬町
橋梁:鋼鉄製・3連・上中下路式・曲弦トラス橋
昭和47年7月
境水道は、鳥取県境港市と島根県松江市美保関町の間を流れる幅約600mの一級河川で、日本海に臨む境港付近では1万トンクラスの船舶が航行する。
境水道大橋は、文字通り境水道を横断し、鳥取・島根両県をつなぐ橋梁である。
全長709m、幅8m(2車線)の3径間連続トラス橋で、昭和47年7月に開通した。竣工当時、この形式の橋梁では、中国地方最長、全国で5番目に長いものであった。また、境水道の航路幅を確保するため、橋梁中心部は橋脚の間が大きくとられ、その支間長240mは現在でも日本のトップクラスに位置づけられる。水面からの高さも40m程度あり、大型船舶も余裕を持って橋下を航行できる。
この橋梁は周辺市町の強力な架橋推進運動を背景に、昭和44年11月、日本道路公団によって着工され、総工費18億円をかけて竣工したとされている。
架橋にあたり、地形等の問題に対応するため、最新技術の採用など、様々な工夫と苦労があったようだ。
まず、鳥取県側の軟弱な表層地盤と深い基礎地盤に対応するため、リバース工法という最新の基礎工法が採用されている。当時、この工法による施工例は極めて少なく、地質条件や掘削深度など諸条件をあわせると、ほかに例のないものであった。
また、この橋梁は両岸の地盤高に相当な較差があるため、橋面の頂部が中央より大きく島根県側に寄る「左右非対称」のアーチ形状をなしている。これにより複雑化する橋の力学バランスを調整するため、トラスが橋の中央へ向かうにつれ、上路式から中路、下路式へと変化する「上下路式曲弦トラス形式」という特異な形状となった。この橋の施工には、移動デリッククレーンによる片持式架設工法が採用されたのだが、この特異な形状のため、クレーンは曲弦材の上を走行しなければならなくなり、その作業は困難を極めたという。
施工期間は約3年だが、着工前の調査・検討に約6年もの歳月がかけられている。その歳月が、大変な苦労と努力の末、適切な設計と綿密な施工計画がなされたことを物語る。
平成12年に発生した鳥取県西部地震において、本橋が全くといっていいほど被害を受けなかったことに、その設計・施工が確かなものであったことがうかがえる。
この橋梁ができるまで境水道の横断には、フェリーボートや民間渡船が利用されていたが、開通により、フェリーボートは廃航、民間渡船も次々に姿を消すこととなった。
しかし、貿易、海上交通、漁業の要所である境港、対岸は風光明媚な山と海をそなえもつ島根半島と、互いに観光資源をもつ両岸が短時間で結ばれたことで、より魅力的な観光エリアが誕生し、地域に多大な経済効果をもたらした。
いわば境水道大橋は「観光のかけ橋」ともいえる。また、この橋梁自体も、その独特で美しい姿と、橋上から見下ろす景色のすばらしさで、地域のシンボル的役割を担っている。
開通以来、本橋を利用する場合は通行料金が課せられていたが、平成14年7月、開通30周年をもって橋の管理は日本道路公団から鳥取・島根両県に移管され、それに伴い通行料金が無料となった。
開通30周年を記念したイベントで、「おさかな大橋」という愛称が付けられ、それまで以上に地域住民から愛されている。